危険てなんでしょうか。

しばしば来ていた小学生が来なくなってしまいました。
入口までは来て、挨拶してくれるのですが、そこまでです。
おうちの方に、危ないから子どもだけで入ってはいけないと言われたそうです。
なんとさびしいことでしょう。
「あたし字がいっぱいある本が好きなの!」といってよろこんでいたのに。


本屋なんか、一人で入ってなんぼじゃないでしょうか。
同じ室内で、他人同士が、それぞれ一人でいるのが、よいのです。
読み切れない量の本が存在して、理解しきれない内容の本が存在して、
でもそのどれもが自分に向かって開かれているという喜びは、現実に本が山盛りになっている場所に入って、過ごして、感じることです。
本棚の前に立って、ハッと息をのんだ彼女に、それを閉ざすとは。


っていうか、参考書や塾を与えるより、毎日本屋で一時間ぼーっとしてろって言った方が、教育になるんじゃないでしょうか。
文学史を教科書で暗記するより、新潮文庫岩波文庫の背がならぶ棚を眺めていた方がよほど有効です。
読みたいけどまだ読めない本を無理やり読んでいくほうが、机の前にいるより成績が上がります。
とくに高校までの国語に関しては、読書の基礎体力がつけば、教科書を一度も開かなくてもバッチリだと断言できます。
本の中のキーワードを追っていけば、他の分野の筋肉もつくでしょう。
むしろ教科書を補助教材くらいにみればいいんです。


年中開けっぱなしで、そとから丸見えのこの店は、小さい人にも安全です。
本棚によっかかるとか、危ないことをしたら、直接怒ります。
色々並べますので、それぞれの本の中身が危険かどうかは、読む人が勝手に決めればいいです。
それを言ったら、本はそもそも危険なものです。